このブログはタッキーこと大瀧の個人的なオタク活動を綴ったものです。
ある名もなきオタクの話をしよう。
彼はオタクだ。
欲しいものは必ず手に入れる。
それがどんなに入手困難なお宝でも。
そのお宝の存在を彼が知ったのはおよそ2010年のことだった。
とあるゲームのグッズだった。
そのゲーム自体は2007年に発売されたものであり、同年にイベントで発売されたグッズだった。
彼がそのゲームをプレイしたのは2009年。
そしてそのグッズがあることを知ったのが2010年のことだったのだ。
そのときには既にグッズが世に出てから3年の月日が経っていた。
3年前のグッズを探すというのはオタクの世界では大変なことだ。
一般販売物ならともかく、イベント限定や、限定特典などの非売品となるとその入手難易度は格段に高くなる。
そのようなものを後から手に入れるとなると中古ショップやオークションが基本だ。
これらを通して入手する場合、意識しなくてはならないのが流通数だ。
知名度の高い作品のグッズであれば多くの人が買い、売る。
つまり中古市場に多く出回る。
しかしマイナーな作品となると中古市場に流れる数は圧倒的に少なくなる。
その上で熱狂的な信者がいると、少ない流通数の物を奪い合うことになる。
ということは、中古価格が高騰するということだ。
彼が求めていた物は圧倒的にマイナーな作品だった。
その時点で入手は非常に困難だった
だがさらに恐ろしいことに、そのグッズがイベントで販売された個数はなんと50個だというのだ。
そのグッズはこの世界にたった50個しか存在しない。
つまり最大でも50人の人間しか所持することができない。
もし一人で複数個購入していたら所持できる人間はさらに少なくなる。
加えて50個全てが売り切れたとは限らない。
その上で買った人間の内何人が後々中古ショップなどに売っただろうか。
それが使用されず未開封のままである確率はどのくらいだろうか。
そう、彼が探し求めている物はまさにこの瞬間、お宝になった。
圧倒的希少価値、圧倒的入手難易度
確実に一筋縄では手に入れることができないことを彼は確信した。
そして彼は決意した。
必ず手に入れると。
正に気持ちは仮面ライダーディエンド。
揺るがぬ決意の元お宝を探しはじめた。
2010年当時、彼はまだアキバに通い始めて日が浅かった。
お宝を手に入れるため、お宝のありそうな場所を徹底的に探した。
アキバだけでなく池袋、中野、渋谷などオタクの中古ショップがある所ならどこへでも行った。
実店舗だけでなくネットショップでも、当然オークションも常に見張っていた。
果てはSNSで検索をかけることすらするほどだった。
月に一度はアキバに行き、中古ショップの巡回をし
週に一度はネットショップの情報捜索を続けた。
簡単には見つからないと分かっていた。
だから彼は続けた。
今日はこの店にはあるだろうか
やはりない
次の店は
やはりないか
念のためネットも見ておくか
やはりない
今日も収穫はなしか
本日の巡回活動は終わりだな
そうした日々を何日も何か月も続けた。
終わりのない巡回活動
もしかしたら手に入れられないかもしれない
そもそもゲットできる保証はどこにもない
万が一見つけたとしても価格が高騰しすぎて到底買えないかもしれない
絶望的な要素ならいくらでもあった
むしろ希望的な部分のほうがほとんどなかった
それでも彼は諦めなかった。
なぜなら彼はそのお宝が欲しいからだ。
そのためならどんなに絶望的な状況であろうとも彼は探し続けるのだ。
諦めたら絶対に手に入らない。
手に入るまで探し続ければ手に入る。
それを彼は分かっていた。
「とても絶望的でしたよ。何度行っても見つかる気配がないんですからね」
「探し続ける内に色んなグッズの相場が自然と分かるようになってしまいましたよ。ああ、またこいつかってね」
「欲しいもののデザインは目に、脳に焼き付けているから視界に入れば必ず分かる自信がありますよ」
「それでもどれだけ探しても見つけられませんね」
「正直諦め半分で探してる感覚すらありますよ、今日も探すけどどうせないだろうってね」
「探すことそのものが作業的になってる感じですね」
「それでもやっぱりそのグッズのネットページを見ると絶対に欲しいって思っちゃうんですよね」
「もしあのお宝をゲットすることができたらそれはもはや奇跡かもしれないなってそう思ってますよ」
もはや奇跡が起きないと手に入れることはできないのかもしれない。
そう
起きたのだ
奇跡が
お宝との奇跡的な出会いだった。
あまりのことに目を疑った。
だが確かにそこに存在したのだ。
迷うことなく購入した。
探し始めて4年が過ぎた頃だった。
「奇跡だと思いましたよ、見つけたときは」
「しかも見つけた場所がアニメ系のショップじゃなくて模型とかおもちゃ系のショップだったからなおさら驚きましたよ」
「そういう物の取り扱いがあることは知ってましたし、念のため巡回してましたけどまさかあんな所でって感じでしたね」
「今でも買ったときのことはよく覚えていますよ」
「あれほどの奇跡はもう起きないんじゃないかっていう気すらしてきますよ」
「でもね、奇跡っていうのは、本当に偶然的におきるものではなくて、自らの努力と行動によって導かれる、いわば必然だと思うんですよ」
「なぜなら僕は諦めずに探し続けた。4年間探し続けたからこそ奇跡的な出会いをつかみ取ることができたんですよ」
「もし探すことを諦めていたら奇跡は起きずに終わっていました」
「奇跡っていうのは自分の力で成し得るものなんだとそう感じました」
彼は今も新たなお宝を求めて探し続ける日々を送っている。
そう、奇跡を信じて。
このモザイクの上からでも何のグッズか分かったら君も仲間だ